はじめに
皆さんはARミラーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?AR技術と大型サイネージを活用し、まるで実際に服を着ているかのように、仮想的に服を試着できるシステムです。近年、デジタルファッションが注目を集める中、ARミラーはショッピング体験を革新するテクノロジーとして期待されています。しかし、実はこの技術は、今から10年以上前から存在していたことをご存知でしょうか?今回は、そんなARミラー黎明期の活用事例を紐解き、デジタルファッションの未来を拓いた先駆者たちの足跡を辿ってみましょう。
2011年:ライトオンARミラー
2011年、ライトオンはソニー・ミュージックコミュニケーションズと共同で、プレイステーション3の技術を活用した「ライトオンARミラー」を導入しました。このシステムでは、2D画像の洋服を身体に重ね合わせることで、まるで実際に服を着ているかのような体験を提供しました。当時の映像を見ると、エフェクトを駆使した斬新なアイデアと技術力の高さに驚かされます。
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2011年:TOPSHOP Kinect Fitting Room
2011年、TOPSHOPはモスクワの店舗に、AR技術を用いた画期的な試着システム「Kinect Fitting Room」を導入しました。Kinectの動き感知機能を活用し、服を脱がずに、ディスプレイ上で仮想的に服を試着できるシステムです。手を上げるだけで、画面上の自分の姿が別の服に変わるという体験を提供しました。
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2012年:AR Fiiting by A-net
2012年春には、東急プラザ表参道店のHUMOR SHOP by A-netにて「AR Fiiting by A-net」が導入されました。マイクロソフト社のKinectセンサー技術を活用し、自然な動きで服を試着できるよう進化を遂げていました。タブレット端末で商品を選択し試着し、気に入ったコーディネートはスマートフォンから、FacebookやTwitterなどのSNSにアップロードできました。
2012年:UNIQLO MAGIC MIRROR
2012年秋にはユニクロの「UNIQLO MAGIC MIRROR」が登場しました。UNIQLO MAGIC MIRRORは、大日本印刷が開発した技術を使用しており、商品を着てタブレット端末で色を選ぶと、目の前のサイネージで着ている商品の色が変わるというものです。こちらも撮影機能がついており、メールやSNSに撮影した画像を送ることが出来ました。2012年にサンフランシスコ店で導入され、日本では翌2013年にユニクロ銀座店で導入されました。
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2014年:CLO virtual fashionのC-Mirror
2014年のCES2014では、アパレル業界向けの3Dアバター作成ソフトウェアを提供するCLO virtual fashionが、C-MirrorというAR試着システムを展示しました。このシステムは、より高度な3Dモデル技術を活用し、リアルな素材感やドレープ感を再現することに成功しました。
ARミラーが切り開いた未来
これらの初期のARミラーは、現在のデジタルファッションの礎を築きました。当時の技術は、現在の視点から見ると粗削りな部分もありますが、AR技術の可能性をいち早く示し、デジタルファッションの未来への期待感を高めました。
まとめ
ARミラーは、デジタルファッションの黎明期から存在し、着実に進化を遂げてきました。これらの先駆者たちの挑戦がなければ、現在のデジタルファッションの隆盛はなかったかもしれません。高コストや技術的な課題などから普及が遅れていましたが、近年、テクノロジーの進歩によりこれらの問題が解決されつつあり、ARミラーはより身近な存在になりつつあります。今後も技術の進歩とともにさらなる発展が期待されます。例えば、メタバースとの連携や、AIを活用したパーソナライズされたスタイリング提案など、様々な可能性が考えられます。
デジタルファッションは、私たちの洋服との関わり方、そしてショッピング体験を大きく変えようとしています。ARミラーはその最前線に立ち、新たな未来を切り開いていくことでしょう。