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2024.10.25

デジタルファッションの未来 ーデジタルファッションブランド・Déracinéインタビュー[後編]

Table Of Contents

01
制作ツールについて
02
デジタルファッションにおける課題
03
おわりに

デジタルファッションとは何かを、様々なクリエイターや企業と探求するリレーインタビュー企画。第一弾は、幅広いクリエイティビティで日本のデジタルファッションを牽引するブランドDéracinéさん。後編では具体的な制作シーンや今後のデジタルファッションの可能性について伺いました。

前編はこちら 中編はこちら

制作ツールについて

Q.実際に作品を制作する際の工程で使用してるツール系を教えて頂けますか?

伊藤さん:

めちゃくちゃ普通なんですけど大体CLOかマーベラスデザイナー使ったりします。服のすごい細かいディテールを作りたいみたいな時はCLOに切り替えたりします。。あとはそれをゲームエンジンに持っていく事も多いので、そういう時は、マーベラスデザイナーの方が使いやすいです。画像とかアニメーションとかは大体blenderでレンダリングをします。サブスタンスペインターも使います。テクスチャの作り込みをする時ですね。Unreal Engineは、最近すごく面白いなと思ってます。あとは、普通にアドビ系でPremiere ProやAftereffectsとかは、作品によっては使ったりします。

CLOは、3DでファッションのデザインやCGデータの制作を行うことができる専門ソフト。「CLO Virtual Fashion Inc.」が韓国で開発し、現在ではDIESELやHUGOBOSSなどのトップアパレルブランドをはじめ、10,000以上の企業や個人への導入実績がある。ファッション向け3D分野においては業界ナンバーワンソフトとして、日本国内においても大手アパレル企業や教育機関などで活用されている。


デジタルファッションの未来 ーデジタルファッションブランド・Déracinéインタビュー[後編]

プロフィール 伊藤良寛/塚越智恵

両者ともロンドン芸術大学Chelsea College of Art & Design ファインアート学科卒業。2021年デジタル上での新しいファッション体験を提案するブランドDéracinéを設立。


デジタルファッションにおける課題

Q.デジタルファッションならでは課題としてどのようなものを感じてるでしょうか?先ほどの技術的なことなど

伊藤さん:

そうですね、技術的な課題は常にあります。少しずつ良くなってるとは思いますが、YouTubeのチュートリアルとか、結構見ますが、突っ込んでいくともうチュートリアルじゃ追いつかないなみたいなところが出てくるのでそこはなかなか難しいですね。

ーチュートリアルをかき集めて自分たちに取り入れていく感じですね。

伊藤さん:

そうですね、楽しいですけどね。技術的なところももっと開発していきたいですね。アプリケーションのアップデートがすごく頻繁におこなわれるので。これやれなかったなって言ってたこともちょっと待ってるとできるようになることが多いです。なので、難しそうだな、複雑だな、って思ったことはいったんやめて寝かせておくんです。少し経つとアプリケーション側がアップデートしてくれて、出来るようになってるみたいなこともよくあります。

ーリサーチだけはしておく感じですか。

伊藤さん:

普段からそうですね、アップデートとかは確認しています。他の課題としては、やっぱりデジタルファッションをどう楽しむかというところが、まだ課題かなと思っています。そこはまさにflah(フラー)が解決してる事だと思うので、とてもありがたいです。やっぱりデジタルファッションを使ってくださる方、楽しんでくださる方がどう使うかっていうところはまだまだ広がりが欲しいところだなっていうのを思っています。

僕らも最初の年は画像や映像っていう形で表してたんですけど、それってデジタルファッションっていうか、画像作品だし平面作品じゃないかと。本質的にデジタルファッションを楽しむってなったら、やっぱり着たり、あるいはアバターが自分の分身として着て楽しむみたいなところが大切かなと思います。そこが簡単にできるようになって、広がっていくっていうのが僕らとしても嬉しいです。

デジタルファッションの未来 ーデジタルファッションブランド・Déracinéインタビュー[後編]
アプリ「flah」を活用してデジタルファッションを日常で楽しむ様子

ー確かに簡単に着られるようになったらすごく嬉しいですね。

塚越さん:

VRChatとかも最近ユーザーの方がかなり増えてきているという話を聞くんですけど、フルトラ(フルトラッキング)の機材を持ってる方はまだ一部なのかなと思います。もし、機材面でのハードルが少しでも解消すると、もっと増えてくだろうなっていうのは感じています。でも本当にflahはすごいですよね。スマホでできるじゃないですか。そこの気軽さが私たちにとっては本当にありがたいです。デジタルファッションに触れる機会として、はじめやすい、試しやすい、という点がすごく魅力的です。

フルトラッキング

全身にセンサーを取り付けて、人間の動きとアバターの動きを同期させることができる技術。

Q.最近のデジタルファッションの表現はどうですか?

伊藤さん:

僕らが始めた頃はメタリックだったり、ビックシルエットでSFチックなデザインが多かったのですが、最近は多様なものが出てきているように感じます。

塚越さん:

あとはロエベとか見てると、リアルファッションがちょっとデジタルファッションっぽかったりみたいな。そういうのも現象もおもしろいなと思っています。ファッション業界って一括りで言ったら同じなのかもしれないですけど、実際リアルファッションとデジタルファッションって全然違う分野な気がしていて、その中でもちょっと相互作用があるのが面白いですね。

根本的にデジタルファッションって、リアルの服が持つ機能がないと思っています。たとえば、皮膚を守るとか、熱さを調整するようなことはないですし、、動きやすさのような機能性を考える必要がなかったりするので、そこがリアルな服とデジタルの服の根源的な違いで、大きなギャップがある気がします。とはいえ、視覚的なデザイン上は繋がりがあると思います。、デジタルファッションの場合、アバターが人間ではない可能性もあると思うんですけど、人型の場合は視覚的な表現として共通するものはあると思います。

Q.NFTなどの作品も発表されていましたね

伊藤さん:

デジタルファッションを始めた頃は画像や映像でアウトプットしていたのでやってみるかっていう感じではあったんですけど、最近はそこまでやってないので、流行ってたなっていう感じだと思います。今アメリカの方でSYKYがNFTでまた売ってたりしてるので、そういったトレンドが起こるのだったら、またやりたいなと思っています。

おわりに

Q.最後に今後の展望をお聞かせください

伊藤さん:

今後作りたいものとしては、実は最初の頃からずっと考えていることなんですが、今は主に服を作っていますが、同じテーマで武器や建物、乗り物になる動物のようなものも作ってみたいと思っています。そういう、服から少し発展したアイテムを作れたら面白いんじゃないかなって。
flahのアイテムだったら妖怪っぽいコンセプトの武器とかも良さそうですよね。ちょっとファンタジーっぽいアイテムを作ってみるのも面白いかなって思います。服から少し表現を拡張していくみたいなこともやれたら楽しいかなと思います。

塚越さん:

挑戦したいことになってしまうんですけど、今は、不特定多数の方に向けてデザインしているので、個に向けたデザインもやってみたいなと思ってます。

ーある種オートクチュール的な

塚越さん:

はい。テーマも今のところ本当にランダムに選んでいるんですが、もし個に向ける場合って国籍とかまで大きいものでなくても、その方が影響を受けたものとか、バイブルとか、憧れとか、そういうパーソナルな要素、ささやかだけど大切な要素をミックスして作るのもすごい面白いなって思っています。例えば、普段ファッションには影響しないけど、亀が好きな気持ちを反映させたりとか。

ファッションには影響しないパーソナルなものってたくさんある気がするんですよ。そういうファッションに現われにくいことをあえてファッションにしてく、デジタルファッションだから挑戦できる、という面白さもあるかなと思っています。

今はまだデバイスを通さないと見られないっていうすごい限られた空間だからこそ、それを逆手にとって秘めていた思いや個性を表現できたらいいなと思っています。

Q.最後に一言お願いします

伊藤さん:

さっき塚越が言ったこともそうなんですけど、リアルだったらやっぱり着れないようなファッションに気軽にチャレンジできるのがデジタル ファッションだと思います。まだ自分の中に隠れてる個性みたいな、そういうものをデジタルファッションなら表せるんじゃないかと思うので、是非自分の内面をもっと出すような感じでデジタルファッションを楽しんでくださったら嬉しいなと思います。

REALiTiES編集長|荻野 秀文

大学卒業後、接客業を経てCGデザイナーに。インテリア業界でリアリティのある生地表現やクロスシミュレーションを学んだのち、デジタルファッション業界にて3DCG開発をマネジメント。新規事業開発や市場調査を主導。趣味は椅子集め。

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