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2024.11.08

魔法使いになりたい。そこから生まれる作品たち。 デジタルファッションークリエイターokikuYさんにインタビュー

Table Of Contents

01
デジタルファッションを始めたきっかけ
02
リアルな服、デジタルな服の違いとは
03
デジタルファッションの魅力
04
作品をつくる上で大切にしていること
05
今後挑戦してみたいこと
06
デジタルファッションが持つ課題と、可能性
07
デジタルファッションのこれまでと、これからについて

デジタルファッションとは何かを、様々なクリエイターや企業と探求するリレーインタビ ュー企画。第三弾は、デジタルファッションークリエイターokikuY にお話を伺いました。

プロフィール okikuY

大学で服飾美術を学んだ後、2021 年に CLO と出会い、あまりの面白さに本格的に CG を学び始める。ファッション 3D アーティストとして服のモデリングとアートディレクション を担当。魔法つかいになることを人生目標にしている。

魔法使いになりたい。そこから生まれる作品たち。 デジタルファッションークリエイターokikuYさんにインタビュー

デジタルファッションを始めたきっかけ

Q.デジタルファッションを始めたきっかけはどんなものだったのでしょうか?

okikuY:
昔から、ものをつくることがもともと好きでした。 大学時代に服飾関係のことを学んでいて、卒業後もそのまま大学で働いていましたが、転職を考えているときに3D CADに出会い、めちゃめちゃ面白いと感じデジタルファッショ ンの制作を始めました。

3D CAD に出会った時、簡単に作品をつくれると思いました。実際、つくりたいものをつく ろうとすると全然簡単ではなかったんですけど。笑

魔法使いになりたい。そこから生まれる作品たち。 デジタルファッションークリエイターokikuYさんにインタビュー
はじめて1か月くらいの服

これまでに別のアパレル用の 3D ソフトを数回使用したことがあったのですが、3DCAD は断 然使いやすく、直感的に絶対自分はこれを使った表現は得意だと思いました。だから、もっとつくれるようになりたいし、今までリアルでつくってきた服飾の知識も活かした作品づくりができると感じました。 最初は、服をつくることにフォーカスしていましたが、服以外にもファッションに関係する小物などもつくるようになり、今は背景に使えるような表現もつくるようになりました。

リアルな服、デジタルな服の違いとは

Q.リアルな服をつくることと、デジタルな服をつくるの違いはありますか?

okikuY: 頭の中にあるものをつくって目で見て確認するまでの時間がデジタルは圧倒的に早く、そして圧倒的に自由です。例えば、“服を光らせる”という作品をつくりたい時に、リアルでは LEDをつけて、電池の処理をどうするか、それによって服の形が崩れてしまうことや、考えないといけない物理的な課題が多くあります。一方、デジタルだとテクスチャーを光らせる設定をすればいい。もし、“水でできた服”をつくるときデジタルならそれを表現できますが、リアルで水纏 う服をつくることは難しい。 リアルの服にも当然、リアルならではの魅力がありますが、デジタルの魅力は圧倒的な自由さ。そして、その自由さが自分には合っていると思いました。

魔法使いになりたい。そこから生まれる作品たち。 デジタルファッションークリエイターokikuYさんにインタビュー
スカート部分を後から有機的に成長させた

デジタルファッションの魅力

Q.デジタルファッションにおける魅力とはどういったところにあるでしょうか?

okikuY: リアルとデジタルの服の違いに通じるものですが、やはり表現の自由度の高さだと感じま す。ただ、デジタルで突き詰めていこうとすると、結局リアルでつくることと同じくらい 時間がかかります。 それでも、リアルでつくる時には、紙を切ってパターンをつくり、それを布に写して布を切り、縫い合わせていく必要があります。少し形を変えようと思うと、最初からその工程 を繰り返さないといけない。それを何十回もやるとなると相当な労力になる。それが CG だとベースを保存しておいて、簡単に形の調整ができる。 だからこそ、デジタルでの制作を始めてから、トライ&エラーに対して抵抗感がなくなり ました。まずつくってみてベストな形を探ることが当たり前になって、それがリアルの制作にも影響を与えくれていますね。今はリアルでつくる時もその感覚が活きていて、ちょっと違うなって思ったら、ほどいちゃえばいいかってなって、気楽に自分の好きな作品を 追求することができるようになりました。

Q.今もリアルな服をつくっているんですか?

okikuY:
そうですね。趣味なんですけど、自分が着る服を今もつくっています。 デジタルでの服の創作が、リアルの服の創作に影響してチャレンジした作品がつくれてい ます。

魔法使いになりたい。そこから生まれる作品たち。 デジタルファッションークリエイターokikuYさんにインタビュー
リアルな服、結婚式参列用ドレス

作品をつくる上で大切にしていること

Q.作品をつくる上で大切にしていることはありますか?

okikuY: 一番は、自分がつくった作品をちゃんと好きになれるかどうか、それを一番大切にしています。
昔からものを作る時に魔法を使えそうなもの、をテーマにしています。 絶対にそのテーマに合うものしかつくらないというわけではないですが、デザインを考えるときの根本にはそれがずっとありますね。

ゲームで言うとわかりやすいのですが、魔力が上がる装備のような、そういう雰囲気があるかどうか、そう言うものを意識してアクセサリーをつくっていました。その時の感覚が今も頭の片隅にあります。 完成した時にそういう佇まいがあるか、高校生からそういうことを意識していますね。

好きな仕事をして生きていきたい、と言う思いがあって、誰しもがそう思っているんじゃないかと思うんですけど。笑 何が好きか考えると、何かをつくっている時間が楽しいと感じるので、何かを作ることはやめたくないなって思います。

魔法使いになりたい。そこから生まれる作品たち。 デジタルファッションークリエイターokikuYさんにインタビュー
flah用のMineralシリーズはINT+/MP+のようなパラメータを意識した

今後挑戦してみたいこと

Q.今後挑戦してみたいことはありますか?

okikuY:
いっぱいありますね。笑 これまで、写真のような一枚の絵として作ることをずっとやってきたので、 それを動かす、映像にして作品にすることに挑戦したいと思っています。 ミュージックビデオや映画など、服だけでなくそういう表現を楽しみたいですね。

デジタルファッションが持つ課題と、可能性

Q.デジタルファッションが持つ課題と、可能性についてお聞かせください

okikuY: まず課題としては、アパレルの方と話していてもデジタルファッションの話が出ることが 少なく、絶対的な認知度の低さに課題を感じます。
そもそも、3DCAD という存在の認知度が低く、そういった表現手法があることを知られていなくて、興味を持つ、というステータスに行っていないという現状があるように思いま す。 一方で可能性として、もっとデジタルファッションという表現のあり方がアパレル業界の 中で広がっていくと、今以上に自由度が高く幅のある表現が増えていくと思います。実際 に3DCAD を使ったことのない人に使い方を教えると、これは面白い、という反応をもらうことが多くありました。

表現する人が多くなればなるほど、その業界は盛り上がっていくと思います。 課題となる認知度の低さは、認知度が高まった時にそのまま可能性の大きさにつながると思います。 リアルなものづくりは、デザイナー、パターンナー、縫製の方、アパレル業界にいる方だけが関わっていますが、デジタルファッショは、ゲーム業界や映像業界、いろんな業界の 方が関われる場所だと思っています。

多くの方が、多くの業界の表現者が、デジタルファッションという表現をするようになった時、今以上に面白いことが起きるんじゃないかと思います。

デジタルファッションのこれまでと、これからについて

Q.デジタルファッションのこれまでと、これからについて思うことを教えてください

デジタルファッションは、これまでは興味ある方だけが表現してきている世界で、表現者はまだまだ少ない表現領域だと思います。 リアルな服は現代社会において、興味がなくても誰もが着るもので、流行に興味がなかった としても、服を着ていると思います。 今はまだ、デジタル上の服はそれとは違う存在ですが、みんながアバターを一つ持っている世界が来たら、デジタルファッションは当たり前に着るものとなる。そんなふうにデジタルファッションが、当たり前に着る必要がある場所が来たら面白いと思います。

REALiTiES編集長|荻野 秀文

大学卒業後、接客業を経てCGデザイナーに。インテリア業界でリアリティのある生地表現やクロスシミュレーションを学んだのち、デジタルファッション業界にて3DCG開発をマネジメント。新規事業開発や市場調査を主導。趣味は椅子集め。

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